山口吉彦アマゾンコレクション
「Sonhos de Amazonia ―ともに生きる森―」
(致道博物館にて2020年4月3日~6月8日に開催)
【森の生き物】川の動物
世界最大の流域面積を誇るアマゾン川は、最も生物の多様性に満ちた河としても知られています。雨季と乾季の水量の差が大きいアマゾン川は、水位の高低差が20m以上となる場所もあり、雨季には川幅が100kmに達するところもあります。
ジャングルのなかを血管のように駆け巡るアマゾン川は、アマゾンの生態系に命の循環を促します。アマゾン川に含まれる豊富なミネラルや栄養が、熱帯雨林に茂る何千億本もの樹木や植物を育むからです。
アマゾン川には約3,000種以上の魚類が生息しており、毎年約50種が発見されています。
アマゾンの魚と聞いて多くの方が思い浮かべるのは、ピラニアではないでしょうか。ピラニアは南米固有の魚で、成長すると50㎝ほどの大きさになります。約30種発見されていますが、動物を襲うのは10種程度です。獰猛で知られる赤腹のピラニア・ナッテリーでも、実は以外と臆病で、群れで生息します。ただし嗅覚が非常に敏感で、水中で獲物の血を察すると興奮し、たちまち凶暴化します。家畜や人間などの大きな獲物でも、集団の鋭い歯で襲われると、あとには骨しか残らないため、現地の人々からも恐れられています。
そんなピラニアの天敵が最大2mにも達するオオカワウソです。「川のオオカミ」と呼ばれるこの哺乳類は、南米大陸でもトップハンター級の肉食動物です。かわいい見た目とは裏腹に勇敢で、素早い動きと鋭い歯で自分よりも大きなワニですら獲物にしてしまいます。そんな強いオオカワウソも、今は生息地の減少と狩猟のために、数が劇的に減少しています。
ピラルクーは、約一億年も姿を変えていない古代魚で、最大4mを超える世界最大の肉食淡水魚です。産卵期には卵を守って川底でじっとしているため、よく漁の標的にされます。「アマゾンのタラ(バカリャウ)」とも呼ばれており、私も何度も食しましたが、淡白な味でとてもおいしいです。塩漬けしたものが好まれています。
このように、アマゾン川の水面下でも食物連鎖が繰り返され、人間と生態系も互いに影響しあっています。次回は、アマゾン先住民たちがどのような暮らしをしていたのかをみることにしましょう。(山口吉彦)
荘内日報 掲載