ともに生きるということ

山口吉彦アマゾンコレクション
「Sonhos de Amazonia ―ともに生きる森―」
(致道博物館にて2020年4月3日~6月8日に開催)

ともに生きるということ

この度の展覧会「Sonhos de Amazonia(アマゾンの夢)」の開催は、他界した妻・考子の夢でもありました。私が追い求めてきた「共生」をテーマに、長男と博物館学芸員とともに試行錯誤を重ね、これまでとは異なる角度からアマゾンの魅力を伝えられる内容になったと思います。

私はアマゾン先住民が先進国や他の民族よりも優れていると主張したことや、まして、彼らの未開の文化が、私たちより劣ると考えたことは一度もありません。文化とは、その時代、場所、環境、人、さまざまな要素が融合して表出するものです。当然、文化はその時々で変化するものであり、決して優劣をつけられるものではないはずです。

アマゾン先住民の文化も、変化を繰り返してきました。私が先住民の村々を訪れた五十年前、物々交換した品で特に重宝されたのは、彼らにとって当時は珍しく、かつ実用的であった鉄製の山刀やガラス製のビーズでした。本展では、ある先住民が木の実を材料に作った従来の首飾りと、外来素材であるビーズを使った首飾りを並べて展示しました。この二つは、材料は違いますが、全く同一のデザインで作られています。このことは、素材や色が変わっても、彼らの芸術性は引き継がれることを物語っています。

庄内地方にも、地域の暮らしのなかで自然素材から作り出された民具が多く残されています。これらは生活の知恵の集合体であり、紛れもなく私たちの財産です。しかし今、情報の渦に流され、その価値が忘却されつつあると私は危惧します。文化の価値を見出すために、重要な二つの要素があります。一つは、文化の特性を伝える側の「質量を伴った情報」、もう一つは受容する側の見えないものを感知する力、すなわち「感性」です。幸いそれらの要素を同時に満たし、私たちのルーツを教えてくれる場所が鶴岡にあります。致道博物館です。

庄内の民具とアマゾンの民族資料、互いに遠く離れた地域で作られた生活の道具ですが、比べてみるとそれぞれには多くの共通点があることに気付くでしょう。

今回の展示が、少しでも地域の方々の文化に対する関心と理解を増進し、「ともに生きる世界」を築く一助となったのであれば、私にとってそれ以上の喜びはありません。(山口吉彦)

荘内日報 掲載

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