山口吉彦アマゾンコレクション
「Sonhos de Amazonia ―ともに生きる森―」
(致道博物館にて2020年4月3日~6月8日に開催)
【森の生き物】アマゾンの昆虫、陸の動物
今やインターネットで「アマゾンの昆虫」と検索すると、大手通販サイトの情報でページが埋め尽くされます。ペット用の生きた昆虫から食用の昆虫、模型まで、サービスの豊富さには驚かされます。今から70年前、私を夢中にしたのは、(「Amazon.com」ではなく)南アメリカに位置する世界最大の熱帯雨林地帯です。
子どもの頃、私の何よりの楽しみは昆虫採集と本を読むことでした。ある日図書館で手にした本で、私は地球の裏側にアマゾンとよばれる地域があることを知りました。そこは色とりどりの昆虫やリスザル、カピバラのような愛らしい動物たちが棲む楽園なのだろうか、それともジャガーのような猛獣や猛毒をもつ蛇が潜む危険地帯なのだろうか。ページをめくるごとに鬱蒼とした森のなかを脳内探険するのです。アマゾンのことを想像して、眠れない夜を幾度も経験しました。
それから20年、遂に「アマゾンを探険する」という夢を叶えた私は、その地の生物と先住民の暮らしについて調査・研究をしようと心に決めました。私が初めてアマゾンを探険した当時も400種以上の哺乳類、450種以上のは虫類、500種以上の両生類がアマゾンに生息していました。その後も毎年のように新種が発見されているほど、いまだに謎の生物がたくさん息を潜めています。
昆虫に限っても、アマゾンには100万種以上存在すると推計されています。例えば、日本には270種のチョウがいますが、アマゾンにはなんと1万種も生息しています。文字通り桁が違うわけです。世界を見渡せば、実に地球上の半数以上のチョウが確認されています。地球の陸地面積のおよそ六パーセントを占めるこの熱帯雨林は、まさに生き物たちの楽園といえるでしょう。
アマゾンが「遺伝子の宝庫」たる何よりの理由は、熱帯雨林に茂る16,000種、3,900億本の樹木が、動物や昆虫に豊かな食物と住処を提供してくれるからです。また、森のなかを血脈のように流れるアマゾン川は命の源でもあります。カピバラや、ジャガー、ナマケモノ、アナコンダなど、陸に生息する動物の多くは泳ぎも得意で、水にも適合した特殊な生態系と行動様式を持っています。世界一の「種の宝庫」アマゾンでは、多種多様な生き物がバランスを保って共存しているのです。次回は「川の生き物」をテーマに紹介します。
荘内日報 掲載