【森に暮らす】運ぶ、保存する、遊ぶ・造形する

山口吉彦アマゾンコレクション
「Sonhos de Amazonia ―ともに生きる森―」
(致道博物館にて2020年4月3日~6月8日に開催)

【森に暮らす】運ぶ、保存する、遊ぶ・造形する

日本とアマゾンの先住民の生活様式は全く異なります。とは言うものの、互いの価値観には少なからず類似性を見いだすことも出来ます。例えば、日常で使う実用的な道具にさまざまなデザインを施していること。想像力を具現化した玩具で子どもたちを楽しませること。生まれながらにもつ感性や感情は、大きな視点で眺めれば人類共通といえるでしょう。私は世界各地で先住民族の生活用具を収集してきましたが、そのような感性が作り出すシンボル、そしてそこに込められた意味や発想の意外性、特有のこだわりに関心を抱いてきました。

物質社会に生きる私たちは、溢れるほどの物に囲まれた生活をしています。私なんかは特に「物には人の思いや記憶が宿っており、いつか誰かの役に立つ」という考えがあり、なかなか物を捨てることができません。頭では断捨離が必要と分かっているものの、どうしても収集ばかり先行してしまいます。

アマゾンの先住民も、やはり身の周りの整理整頓をします。動物の尻尾で作ったハタキからは遊び心が感じられ、これなら掃除も楽しめるかもしれません。収納用のカゴ類も、見事な幾何学模様や網目のパターンが工夫されており、目を楽しませるために手間暇をかけたことが想像されます。

先住民は、元々はミニマリストであり、物は必要なときに限り用途に合わせて作っていました。ですので、彼らの「ものづくり哲学」では、物持ち・長持ちは重要ではありませんでした。肉体と同様、形あるものは無くなることを理解しており、森の提供する素材から作られた物はいずれ土に還るものと信じていました。

本来は残るはずのないアマゾン先住民の生活用具なわけですが、私の困った収集癖も作用して保存するに至ったことは偶然の産物とも言えましょうか。私はこれらの物を通して「彼らの思い」を伝えたいと願っています。展示中のフクロウやアルマジロの木製の模型からは、先住民の「子どもたちへの愛情」を感じることができます。地球の反対側に生きる私たちとアマゾン先住民ですが、彼らが何を考え、何を大切にしていたのかを想像してみてください。そこに大きな違いはないことに気付くことでしょう。

荘内日報 掲載

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