【森に暮らす】食べる、狩る、漁る

山口吉彦アマゾンコレクション
「Sonhos de Amazonia ―ともに生きる森―」
(致道博物館にて2020年4月3日~6月8日に開催)

【森に暮らす】食べる、狩る、漁る

私が5年ほど生活したブラジルのベレンは、「人種のるつぼ」でありながらアマゾン先住民系の血を引く住民が多いことで知られます。ベレンは鶴岡と同様に、ユネスコ食文化創造都市に指定されており、そのユニークな料理には、先住民、アフリカ、ポルトガルを起源とした文化や食材が融合されています。先住民の食材で有名なものには、マンジョーカや、アサイー、ガラナなどがあります。

マンジョーカは、タピオカの原料であるキャッサバ科の芋です。デンプン質に富んでおり、加工しやすく、保存にも適している万能食物であり、アマゾン先住民族の主食となっています。ただし、青酸の毒を含んでいるため、チピチという伸縮性のある籠筒を使って毒を絞り出さなければ食べられません。毒を抜いたマンジョーカを炒ると、ファリーニャという粉末になり、様々な形で調理することが出来ます。絞り出された毒汁も、天日干しすることで毒が抜け、舌が痺れるような独特の風味をもつ香辛料に変身します。

アマゾンの先住民は狩猟採集民族のため農業はしないと誤解されがちですが、彼らは伝統的な焼畑農耕でマンジョーカを栽培します。マンジョーカは毒をもっているため、畑には害虫が寄り付かず、農作物をよく荒らすクビワペッカリー(イノシシの仲間)さえも避けて通ります。完全無農薬かつ合理的農業の一例です。

マンジョーカで炭水化物を摂取する一方で、先住民は狩猟した動物や魚からタンパク質を補います。危険を伴う狩りは主に男性の仕事です。かつては捕獲や猛獣から身を守る目的で弓矢、槍、吹矢などの道具を使っていましたが、現在は銃を使う部族も多くなりました。

ジャングルで暮らすということは「食うか、食われるか」を意識して生きることです。だからこそ、彼らは命を非常に尊いものと捉えるのでしょう。命を育むための知恵と勇気によって培われた彼らの食文化は、グルメを超えて、私たちの心に染み入るソウルフードでもあります。

荘内日報 掲載

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