山口吉彦アマゾンコレクション
「Sonhos de Amazonia ―ともに生きる森―」
(致道博物館にて2020年4月3日~6月8日に開催)
【精神文化】羽根に込められた思い
本展覧会実現にあたり、父・吉彦への聞き取りや文献調査を通して、父の追い求めたアマゾンの地域について、改めて多くを学ぶ機会となりました。中でも一番共感を覚えたのは、アマゾン先住民族の持つ深い精神性でした。
先住民の生活は自然と一体であり、特有の文化は過酷な自然環境の中で生き抜くための技術と知恵から生まれました。必要なもの全てを提供してくれる森への敬意と感謝の気持ちが、森とともに生きる上で不可欠であるとも言えます。先住民たちは、木々や動物、川から岩まで、あらゆるものに霊が宿っていると信じ、崇めてきました。そのような自然崇拝の概念は、太古から日本で信仰されている神道の原点にも見られます。
また、森には何一つ無駄な存在はなく、全てのものがバランスを保ち、関連し合う輪の中で自らが生存していると彼らは信じています。仏教の諸法無我の教えにも共通するその思想・信仰が根底にあるため、彼らは決して必要以上の資源を乱獲したり、自然を支配したりすることはありません。
信仰は言語とともに、人間が共同体を形成する上で重要な要素であり、信仰を具現化する「儀礼」は、先住民たちにとって大切な生きる目的の一つです。
普段は質素な身なりのアマゾン先住民も、儀礼では装身具やボディペインティングで身を飾り、美しさを分かち合い、共に歌い踊り、楽しみます。
華やかな装身具の中で、特に目を引くのが鳥の羽根製頭飾りです。
鳥は、天と地上を結ぶ特別な生き物と考えられており、アマゾンの熱帯雨林に生息するコンゴウインコやオオハシなどの羽根の原色の鮮やかさは、まるで生きた宝石のようです。
本展示では、それらの鳥の剥製とともに、羽根製頭飾りを浮かせ、アマゾンのジャングルを舞う鳥にイメージを重ねて表現しました。羽根の一本一本が放つ大自然の神秘とともに、工芸品に込められた先住民の繊細な芸術センスと、精神性を感じてもらえればと思います。
荘内日報 掲載